「マイホーム高く売ります」あまい言葉で忍び寄る悪質業者の手口とは?

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任意売却で“悪儲け”する悪質業者

住宅ローンが払えない。
競売で安く売られるのはごめんだ。
ならば任意売却して、少しでも住宅ローンの残債を減らそう。

そこまでは賢明な判断と言えます。
しかし、問題はその先。

「どこに(誰に)任意売却の手続きを依頼するか」、が大きな別れ道です。堅実で良心的な専門家に依頼すれば最善の結果に恵まれるでしょう。万が一、悪質業者にでも引っかかってしまえば最悪の結果を招くおそれも。

任意売却を利用して“あまい言葉”や“うまい話”で忍び寄る悪質業者には要注意です。

【不況につけこむ悪質業。高く売りたいマイホーム 「任意売却」は慎重に】

不況による収入減で住宅ローンの支払いが滞り、自宅が競売にかけられるケースが増えている。そうした中、競売を回避し、住宅を少しでも高く売って残債務を減らそうと、不動産業者が仲介する「任意売却」を選択する人が目立ってきた。引っ越し代を捻出(ねんしゅつ)できるケースも多いが、所有者の弱みにつけ込んで手数料だけを先に取る悪質な業者もいるという。「慎重な判断」を促す声があがっている。

「任意売却に関する相談件数は前年比で倍以上。深刻な経済状況が一番の要因でしょう」
不動産業「レフォルマ」(東京都港区)の伊藤光記社長は、最近の任意売却への注目度の高さに、驚きを隠さない。
任意売却は、住宅ローンなどの支払いが困難になったとき、不動産業者が、所有者と金融機関を仲介し、買い主が納得できる価格で売却を成立させる取引。裁判所の競売では売却額が相場価格より「2~3割安くなる」(不動産関係者)が、任意売却は競売よりも高くなり、少しでも残りの住宅ローンを減らしたい債務者にとってはメリットがあるとされる。

住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が平成20年度に競売をかけた件数は、前年度より35%多い1万6577件。ただ、滞納が始まってから競売までは約1年かかるため、それまでに任意売却をすすめているという。

その任意売却に目をつけ、“詐欺的行為”を仕掛ける業者もいる。
「一般的に『売却額の3%』とされる仲介手数料は、売却成立が前提となるが、『前金』と称して手数料を取り、その後に売却が不成立となるケースもあったという。少しでも高く売りたいという心理につけ込む手口だ」

都内の不動産業者はこう話す。
悪質行為が増える背景には、不況で仕事が減った不動産業者が、専門知識がないのに任意売却に新規参入し始めたという業界の事情もある。
深刻な不況の長期化に伴い、住宅ローンの滞納と、それに伴う任意売却、競売のケースは今後も増加するとみられる。
レフォルマの伊藤社長は「住宅ローンの滞納者は、気が引けて誰にも相談しないケースがあるが、実はそれが一番よくない。滞納してからではなく、支払いが厳しくなった段階で、金融機関などと相談すべきだ」と計画的な行動をとるよう促している。

【参考】ニュース ウェブ(2009年7月3日)
http://newsweb.ldblog.jp/archives/1482884.html

任意売却を利用した悪質業者の手口

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任意売却で住宅ローンの残債を帳消し(0円)にします

根拠の無い“あまい言葉”で相談者を誘う悪質な手口。
言うまでもありませんが、「住宅ローンの残債から売却した物件の額を差し引いた金額」が任意売却後に残る住宅ローンです。当然、残債については債権者と返済方法を相談するなどして、完済しなければなりません。

つじつまの合わない体験談で相談者を誘う

任意売却に関する“奇妙な体験談”を記載したサイトを発見。

<以下、記載のあった体験談>
中央区の○○さんは、会社のリストラが原因で住宅ローン支払いが困難になりA社に任意売却を相談。しばらくして、銀行から競売の申し立てがありましたが、ローンの残債は5,500万円です。その後、任意売却を決意し、一戸建てを売却。
その結果、3,500万円で物件を売却。銀行は3,300万円を回収し、相談者の○○さんは引越し費用として170万円を受け取って、無事に新生活を開始することができました。

一見すると、ただの成功話です。でも、慎重に内容を理解すると通常では考えられない点があります。引っ越し費用の170万円。これは適正な金額ではありません。一般的に発生しない状況です。

基本的な計算方法は、物件の売却代金から業者への仲介手数料や清算金、少しの引越し費用を差し引き、残りの代金をすべて債権者が返済金として回収します。つまり、引っ越し費用を債権者が見積もって50万円だと判断すれば、手元に残るのは50万円です。

ただでさえ債権を早く回収したい債権者が、多くの引っ越し費用を払うと思いますか?

全てのケースにおいてとは言えませんが、可能性は5%にも満たないでしょう。
支払われる引っ越し費用は債権者との「交渉」で決まります。住宅ローンが返済できなくなり物件を売却する相手を、債権者は“客”として扱いません。よって、あまい対応などあり得ないのが普通です。

急な現金が必要な方は、任意売却で物件の現金化をお手伝いします

ここまでくると、もう呆れてしまいます。まるで質屋に物件を預けるかのようなフレーズ。

任意売却には定められた手順があり、債権者との交渉や抵当権の抹消など様々な手続きをクリアして物件を売却します。“すぐに現金化”、もはや問題外です。さらに言えば、売却した代金は ほとんど債権者が回収します。手元に残るのは必要最小限の引っ越し費用だけです。30万円~50万円といったところ。残債が多い場合には、手元に残らないことも。

幼稚な誘い文句ですが、悪質な勧誘であることに変わりありません。くれぐれも“あまい言葉”に誘われて相談などしないよう気をつけましょう。

うまい話でも悪質ではないケースもある

なかには“うまい話”でも“本当の話”も存在します。

例えば、こんなフレーズ。
『売却したマイホームに住み続けることができる』

これは、売却した相手との交渉次第で可能な話です。「リースバック」と呼ばれる正式な方法。条件次第では成立します。ただし、交渉次第です。必ずしも成立する方法ではないので過度の期待は禁物。リースバックを検討する際には、弁護士など任意売却の専門家(業者)に相談したほうが得策と言えるでしょう。

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