他人事ではない、増える住宅ローン滞納者。競売よりも利点の多い任意売却が一歩リードか

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増える“競売件数”に比例して、“競売の取り下げ申立て件数”も急増

東京・大阪・名古屋の地方裁判所が2009年度の上期(4~9月)に扱った不動産の競売件数は5271件。2007年度の下期をはるかに上回る件数で約2倍。

主な理由は、給与の減少による住宅ローンの滞納の増加。銀行など金融機関は3ヶ月以上滞ったローンをデッドラインとし、本格的な督促を開始します。その後も支払不能が続けば、担保の不動産を競売で処分する意向として裁判所に差押えを申請します。

問題は、不動産の売値。競売で不動産を売却した場合、市場価格より3~4割ほど安値で取引されることに。そのため、“任意売却で不動産を売却する人が増えている”傾向にありますます。

不動産鑑定をおこなう㈱三友システムアプレイザルの調査では、2009年度の上期に大阪地方裁判所で競売の申し立てが取り下げられた件数は2008年度下期より4%の増加。約8%から約12%に上昇していることが明らかになりました。

東京地方裁判所でも約11%から約18%に増加。㈱三友システムアプレイザルの萩野裕久専務は。「任意売却の交渉が成立し、取り下げされた競売が多かったのではないか」と市場動向の分析結果を発表しています。

【参考】住宅ローン滞納、増える任意売却 競売よりも傷浅く 朝日新聞
http://www.asahi.com/special/08017/OSK201001080167.html

競売ではなく任意売却が選ばれるポイント

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メリット1 競売よりも売値が高い

任意売却は「不動産の所有者」「金融機関(担保権者・抵当権者)」「買い手」の三者が合意することで売買が成立する仕組み。そのため、地方裁判所が管理する競売のオークションとは違い、一般市場で不動産を売買することが可能です。

競売となれば、どうしても安値で取引されてしまうのが現実。不動産に限らず、Yahooなど一般のオークションでも同じことが言えます。安価で取引されるオークションでは“利点”がありません。

その反面、不動産売買は市場相場に近い売値で取引されます。専門業者が仲介するため、なるべく高値で成立するよう業者も必死です。

任意売却を詳しく知る前に競売とはどういうものかも理解する必要があります。

メリット2 引っ越し費用が工面できる

競売で売れた代金は、債権者が返済金として全額を回収します。任意売却は債権者との交渉次第で、引っ越しの必要経費を売却代金の一部から融通してもらえる可能性が。すべては、債権者との交渉がカギとなります。

メリット3 退去日を相談できる

競売で物件が売れた場合、ただちに退去しなければなりません。しかし、任意売却は買い手に交渉することで退去日を相談できる可能性も。転居先を確保するうえで、大きなメリットと言えそうです。

メリット4 滞納料金を、ひとまず精算できる

固定資産税や管理費の滞納、修繕金など延滞している料金を債権者の配慮によって売却代金の一部から精算してもらえる可能性があります。精算する範囲は債権者との交渉次第ですが、上手くいけば“全ての滞納料金を精算できた”なんてことも例外ではありません。

ただし、その分だけ住宅ローンの残債は残ったままになるので“決して得したわけではない”ことを理解しておきましょう。ひとまず身辺をスッキリさせるメリットとして、謙虚に受け止めるくらいがちょうど良いです。

メリット5 売却の理由を不透明にできる

競売になると地方裁判所の差し押さえが始まるため、近所に心外なイメージを与えます。なかには、「返済に行き詰まった」と詮索したり勘繰る人も現れるでしょう。ウワサ話の種が余計なストレスを生むのはナンセンスです。

任意売却は通常の不動産売買となんら手続きが変わらないので、差押えなど周囲に悪い印象を与えずにすみます。手続きから売却まで通常通りに振舞えるメリットは、余計なストレスを省く強みです。

メリット6 専門家の介入で可能性の幅が広がる

任意売却における可能性の幅とは、「売値」「住宅ローンの残債」「売却後の生活」です。

競売の売値は市場相場の3~4割ほど安値で取引されますが、不動産や弁護士など専門家が介入することで一般の相場に近い売値で売却できるよう働きかけます。

売却後の残債についても、専門家が債権者と相談し、なるべく債務者の負担が少なくなるよう返済計画を交渉します。競売では交渉は不可能。できたとしても、任意売却ほど柔軟に対応してくれません。

最後に、売却後の生活。
これは、メリット2・3・4に該当します。そのほかにも、物件を購入した買い手との交渉により、リースバックで住み続けられる可能性も。売却した物件は“持ち家”ではありませんが、月々の家賃を支払う条件で転居せずにすみます。また、将来において買い戻すことも可能になる方法です。

任意売却のデメリット

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事故情報の登録

住宅ローンの返済を3ヶ月滞納、もしくは任意売却した時点で信用情報機関に事故情報が登録されます。つまり、ブラックリストです。

連帯保証人への連絡

任意売却は連帯保証人、または連帯債務者の同意が必要です。同意が得られない場合、任意売却することができず競売での処分になってしまいます。

タイムリミットの問題

任意売却の手続きが認められる期限は「競売の入札最終日の前日まで」。競売で買い手が確定する日の前日までに任意売却が完了していることが条件となります。競売開始から入札開始までは3ヶ月ほどの期間しかなく、任意売却は時間との勝負です。

任意売却の費用

任意売却の必要経費は次のとおり。

  • 不動産業者に支払う仲介手数料
  • 担保を外すための抵当権抹消登記料
  • 税金など差押えを解除するための経費
  • マンションの管理費・修繕費など滞納料金の精算金
  • 後順位担保権者の担保権を解除するための費用(通称:ハンコ代)
  • 退去時の引越費用

これら経費は無論、自己負担です。しかし、ただでさえ行き詰っている現状に費用を工面する余裕などありません。債権者と相談し、費用を負担してもらえるよう交渉する必要があります。

売却する本人に交渉力が無ければ、専門家に依頼したほうが得策。任意売却は8割方“交渉力”が結果を左右する、といっても過言ではないのです。

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