任意売却の用語集
短期賃貸借制度(たんきちんたいしゃくせいど)とは[意味/説明/解説]
短期賃貸借制度は、賃借人(賃料を払って借りる人)の権利を保護するために考え出された制度で、平成16年4月1日に廃止されています。
不動産には、抵当権という権利を設定することができ、抵当権はお金を借りたときに、返済の保証として、返せなくなったらその不動産を取り上げる(差し押さえる)ことができる権利です。お金を貸した債権者は、不動産に抵当権を設定してもらうことで、最悪の場合でも不動産を競売にかけて回収することが可能です。
ここで、抵当権が設定されている不動産を誰かが借りた場合、抵当権によって競売になると、借りていた不動産を明け渡す必要があります。建物の場合には、家賃を払って住んでいるのに出ていかなくてはなりません。
例えば、大家が金融機関でローンを組んでアパートを建て、土地とアパートに抵当権を設定したとします。そこに入居希望者が現れて、住み始めることになりました。その後、大家がローンの返済に行き詰まり、金融機関が抵当権を実行して、土地とアパートを競売で売却すると、入居者は立ち退きをせまられてしまいます。
このような場合、賃借人である入居者の立場は非常に弱く、抵当権がある物件には安心して住むことができなくなります。そのため、民法で定められている建物は3年、土地は5年の間、賃借権を強くして保護したのが短期賃貸借制度です。
ところが、短期賃貸借制度によって、賃借人の権利を保護した結果、逆に悪用するケースが目立つようになりました。具体的には、抵当権による競売で落札した買受人に対し、短期賃貸借制度で明け渡さなくても良いことを利用し、高額の立ち退き料を請求するのです。
こうした経緯があり、短期賃貸借制度は廃止されることになりました。現在では、6ヶ月間の明け渡し猶予期間を過ぎると、建物を明け渡すことになります。ただし、抵当権が設定される前から借りているときは、賃借権は保護されて引き続き借りられます。