任意売却の用語集
留置権(りゅうちけん)とは[意味/説明/解説]
普段聞きなれない言葉ですが、留置権は日常的に起こりうる権利で、他人の物を占有しているときに、占有物によって生じた支払いを受けるまで占有し続けることができる(留置できる)権利です。
留置という言葉は、警察に逮捕されて留置されるという使われ方もしますが、留置権は全く違う意味で、そのままでは理解が難しいため事例で考えてみましょう。
Aさんは、ペットとして飼っている猫が病気にかかったので、動物病院に連れていきました。しかし、思いのほか治療費が高く、Aさんは支払うことができませんでした。
ここで動物病院は、治療費を支払わなければ、猫を返さないと主張します。
常識的に考えても、猫を返してしまうと支払いに来ない可能性もあるため、動物病院の取った行動は不思議ではないでしょう。
Aさんは、たまたま役所で開かれていた無料法律相談に出向いて、動物病院の件を相談しましたが、担当の弁護士いわく、動物病院が猫を返さないのは法律に定められた権利で、適法だとのことでした。
弁護士が言っている、法律に定められた権利が「留置権」です。
留置権を規定する民法第295条には、「他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。」とあります。
事例では、「他人の物」は猫、「占有者」は動物病院、「その物に関して生じた債権」は猫に関して生じた治療費の支払いと置き換えられます。
そして、「その債権の弁済を受ける」とは、動物病院が治療費の支払いを受けることですから、治療費が支払われるまで、動物病院は「その物を留置」つまり猫を自身の支配下に留め置くことができるというわけです。
留置権は「その債権の弁済を受けるまで」の条件が付いた権利であり、債権に該当する治療費の支払いをAさんが済ませてしまえば、もはや条件を満たさず、留置権は当然に失われます。
動物病院は、Aさんが治療費を支払っても猫を返さなければ、留置権によらない不法な占有になるのです。